【アニメ】グリザイアの果実/迷宮/楽園 レビュー

数年前の作品であるため、今作のレビューは散々されてきているだろうとのことから、当サイトではいつものことではあるけれど、他の人が触れていないような内容をメインに書いていきたい。

今作は3部作のフロントウイング10周年記念作品であり、過去のフロントウイングの代表作と言えば『ジブリール』であり、エロメインの完全なる抜きゲーだった。

今までそっち路線で歩んでいたのに、なぜ急にシリアスな作品をぶっ込んできたのだろうと思っていたが、たぶんそれは逆なのだろう。

ビジネスとしてエロゲーが儲かっていたのだ。
会社である以上、利益を最優先で確保しなければならない。

本当はもっとシリアスな作品も作りたかったのだろう。
しかし、あらゆる環境においてそのチャンスがなかなか無かったのかもしれない。

それもそうだ。
売り上げが低迷しているエロゲ―会社において、昔のようなシナリオメインのゲームは淘汰されていき、有名なシナリオライターはアニメやライトノベルなど、他の媒体に活動の場を移していた。

そんな中で、フロントウィングのシナリオライターであったヤマグチノボル氏(代表作『ゼロの使い魔』)の突然の死去は、フロントウイングにとって非常に辛い思いがあったのではないだろうか。

それがようやく、10周年という節目に勝負作として世にグリザイアシリーズを放ち、見事に大成功を収めた。

グリザイアシリーズにおいて、今作の成功はシナリオライターやイラストレーターのみならず、影でその仕事を支えていたスタッフに拍手を送りたくて仕方がない。
よくぞエロゲーの売り上げが落ちまくっているこの中で、これだけのメディアミックスと成功を収めるゲーム会社として出世したと。
その商才は、それこそジブリールなどの抜きゲーを制作していた時期からの積み重ねによるものであり、涙無くして語ることができないだろう成果なのだ。

これを機にアニメや映画、ソーシャルゲームと一気に手を広げ、『グリザイア:ファントムトリガー』ではアクアプラスのように全年齢のゲーム制作を始めたようだが、正にフロントウイングのホームページにも記載してある、

「時代の流れに伴い劇的に変容する昨今のコンテンツ業界ですが、変化を恐れず、常に挑戦していきたいと考えております」

その言葉に重みを感じるのは私だけだろうか。

それもあってか、過去の作品に出演していた声優達がこぞってメインヒロインを演じている。
特に私の大好きな青山ゆかりさんも、今作の重要なキャラクターである風見一姫を演じている。
もうそれだけで、あー、たまんねぇなーおい、可愛いなぁー(語彙力)

アニメの演出について語るならば、まず触れておかなければならないであろうシネマスコープ。
画面のアスペクト比が1:2.35となるシネマスコープで全編を作成したという初のTVアニメであり、簡単に言えば映画でよく使われる横長の映像だ。

シネマスコープで有名な監督といえば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『フォレスト・ガンプ/一期一会』で有名なロバート・ゼメキス監督だろうか。

グリザイアのために全ての作業システムを一新し、閉鎖的なアニメ業界において、これだけ挑戦的な革命を成し遂げた天衝監督に誰もが虜になったことだろう。
映像的には綺麗なのだが、演出面でも横長になると手法が変わってくるため、やはり作業現場は混乱したようだ。

シナリオも非常に良くまとめられていて、ゲーム未プレイだった私もすんなりと理解することができたし、ゲームを購入しようと思えるほど胸が熱くなる展開が続いた。

あえて敵を作るような表現をすると、非常に王道的な作品だった。
また、過去の名作を上手く昇華させた作品であった。

例を挙げるならば、『グリザイアの果実』で屈指の名シナリオと謳われた周防天音の『エンジェリック・ハウル』

この『エンジェリック・ハウル』は、小説家として有名な貴志祐介氏(代表作『新世界より』『悪の教典』など)の『クリムゾンの迷宮』とほぼ同じ展開である。
なぜかネットで調べてもほとんど触れられていないので、あえてここでは掘り下げていく。

ネタバレになるので内容は書かないが、終盤の展開などは明らかに影響を受けているであろう。そんな過去の名作を、可愛い女の子を交えて上手い具合にノベルゲームとして昇華した手腕を高く評価したい。

なぜそこまで言い切るんだと思われるかもしれないが、他にもオマージュらしき点が2つある。

一つ目は、『クリムゾンの迷宮』というタイトルが『グリザイアの迷宮』と似ている点。

二つ目は、『エンジェリック・ハウル』というタイトル。
実は貴志祐介氏の書いた小説には『天使の囀り(てんしのさえずり)』という作品がある。
……あとはこのレビューを読んだあなた方に判断を委ねよう。

『グリザイアの楽園』では、スティーヴン・スピルバーグ原案の映画『イーグル・アイ』がモチーフになったのではないだろうか。
最後の戦いを終えた主人公が爆風の中、逃げ道がわからなくなって諦めたそのとき、師匠の顔が浮かんで帰り道を示してくれた展開などは、ゲームの『スターフォックス64』を彷彿とさせる。

他にも私が気付かなかったオマージュが多く散りばめられているであろう。
だからこそ言いたい。

そんなクセの強い過去の名作達を1本の作品として仕上げてしまったシナリオライターは天才である、と。

そして同時に、『クリムゾンの迷宮』も『イーグル・アイ』も『スターフォックス64』も聞いたことがない世代の若者が、初めてグリザイアシリーズに触れたとき、いったいどれだけ感動したことだろうか。

私には想像もできない。心の底から羨ましいと思う。
そんな衝撃を受けた彼らが、きっと今度はグリザイアを超える名作を生み出すクリエイターとなるに違いない。

なんだか本作のレビューとは少し外れてしまったが、最後にまとめるのであれば、

グリザイア3部作とは、
『風見一姫による風見雄二のための物語』なのだろう。

評価 ★★★★★★★★★★ 10/10