【ラノベ】ミナミノミナミノ(秋山瑞人) レビュー

『イリヤの空、UFOの夏』の大ヒットでアニメ化が決定したのをチャンスとみた秋山瑞人先生と編集が、アニメのタイミングで『イリヤ』っぽい話をぶつけようと試みた本作。
某出版関係の方から聞いたところ、かなり売れたようである。

そして、オチがM・ナイト・シャマランだった。びっくりした。
ネタバレになるので明言はしないが「あっそっちですか」となった。
唐突すぎて読者は一瞬突き放されたような気持ちに陥るだろう。

だが待ってほしい。
そもそも秋山先生はSF作家なのである。

イリヤの空、UFOの夏だって宇宙人との戦争が背景にあったし、
2003年には『おれはミサイル』が日本短編部門で星雲賞を受賞しちゃうくらいの実力者なのである。

恐ろしいかな秋山瑞人という人間は、オチが使い古されたものであっても、冷蔵庫の中になぜかトマトしか入っていなくても、冷蔵庫が反政府組織に爆破されてその結果人類が半分以上消滅したとしても、どこからともなく満漢全席を生み出してしまう能力を持っている。

その文章力と構成力こそが、秋山瑞人の熱狂的な信者‘瑞っ子’が生まれたきっかけであり、新刊が出ない出ないと嘆き悲しみながら、もうなんならツイッターとかでもいいからやってほしいと、毎日「おはよー」とか「腹減った」だけでもいいから秋山先生の書いた文章が読みたいと思わせる魅力なのである。

……が、『おれはミサイル』からもわかるように、秋山先生の魅力の一つにミリタリー知識に秀でていることが挙げられる。

アニメなら『ガールズ&パンツァー』における戦車、『艦隊これくしょん』なら戦艦など、男心をぎゅっと鷲づかみにするような作品があることをご存じだろう。
残念ながら本作では、ほとんど出てこない。

しかし、落ち込む必要は無い。
あの『イリヤの空、UFOの夏』で伊里野加奈のバッグから見てはいけないヤバイ奴が飛び出してきた恐怖とこれからどうなるんだろうというワクワク感は健在だ。

だからこそ続刊が出ないこと、これこそが致命的なのである。
本作は何を隠そう、最高に盛り上がったところで終わっている。

あれだけドキドキワクワクさせておきながら、「続きの原稿? ヤギに食われましたよ」と言われた方がまだ救いがある終わり方をしている。

それはまるで伝説の超B級映画『フォーガットン』を彷彿とさせ、M・ナイト・シャマランまたやりやがったかなどと熱い風評被害を与えるほどである。

残念なことに、秋山先生本人が「あれ(ミナミノ)はもういいでしょう」と発言している。
その上、イラストを担当している駒都えーじさんも笑いながら「続きはない」と仰っていたので続刊が出ることはまずない。辛すぎる。

何を隠そう、私は秋山作品の中で今作のヒロイン『秦納舞部春留(しんのうまいべはる)』が一番好きなのである。
可愛くてぶっきらぼうでツンデレで、でも本当は寂しがり屋で甘えてくるのがまるで猫のようであり、しかも主人公との会話が終始‘敬語’なのだ。
この敬語がまた一線を引いている感があるのに、実は主人公に心許しちゃってるけど恥ずかしくて素直になれない雰囲気がひしひしと伝わってきて、それはもうたまらないのである。たまらないのである(二回言った)

にも関わらず、今作では主人公がヒロインを泣かして終わる。
ちょっと待ってくれ、秋山先生そりゃないぜ……。

――いつか春留が笑顔になる日は訪れるのだろうか。

【評価】★★★★★★★☆☆☆ 7/10