【ラノベ】イリヤの空、UFOの夏(秋山瑞人) レビュー

まずひとつ、大事なことをあなたに伝えなければならない。
私はこの『イリヤの空、UFOの夏』が世界中の小説の中で一番好きである。

もう一度だけ言おう、大好きなのである。

なぜこのような前置きをしたかというと、この小説について本気でレビューを書くと、たぶん10万文字くらいいってしまう。

なんなら今作の文章が改行されるごとに、「あっここ!ここすごい!この文字の配列凄い!」などと、まるで象形文字を読み解く学者のようなテンションで延々と語り出す。そのため、今作のレビューは簡潔に1000文字程度でまとめたい。

諸君らはそこまで言うならレビューを書かなければいいだろう、と思うかもしれない。
そして失い続けるんだ……貴重な機会(チャンス)を…!
(ざわっ……ざわっ……)

熱狂的な信者である瑞っ子ならこの気持ちを理解していただけるだろう。
そう、これは逃れられない運命なのだ。
このレビューが初見の方がいたら、きっと私のことをウザイと思うだろう。

それでいい、あなたは時間に囚われてはいけない。

なぜなら秋山瑞人を知った人間は誰もが、「いつまで経っても新刊が出ない」と定期的にググっては落胆し、時折某巨大掲示板で「何か情報あったー?」などとコメントを打ち、末期になると「EGFマダー?」しか言語を喋れなくなる。

俺はもうそんな奴らを増やしたくない!

――などと、果たしてゾンビは思うだろうか?
思うわけがない。脳がやられているのだから。

時には生きている人間を、時には仲間に噛みついて威嚇しあう。
これこそ‘秋山・オブ・ザ・デッド’である

この小説は秋山瑞人先生の代表作であり、一度味わったら二度と抜け出せない裏ルートで取引されている麻薬のような物だ。

昨今、SFでボーイ・ミーツ・ガールといえば『君の名は。』で大ブレイクした新海誠監督が筆頭に挙げられるが、どうか思い出してほしい。

すべての夏の残骸を、ビールの空き缶を、スチロール製の焼きそばのトレイを、サンオイルのボトルを、穴の開いたビーチボールを、腐りかけたスイカの死骸を、ボロ布のような海水パンツを、まだソースがこびりついている割り箸を、ぺしゃんこに踏みつぶされたLサイズの紙コップを、誰かが落として誰かが拾って中身を抜いてまた捨てた財布を、ひねり潰されたタバコのパッケージを、温水シャワーありますの看板を、半分に分かれるハート型のペンダントを、砂に埋もれたそれらすべての夏の残骸を蹴散らしながら走る浅羽直之の姿を。

本来このようなサイトでレビューを書くのは、このサイトから商品を購入してほしいからに他ならない。
それによって雀の涙程度ではあるが収益がある。
そのためにサイトを運営している、はずだった。

だがしかし、今回ばかりは許して欲しい。
このレビューは初見の方のために書いてはいない。

このレビューは、すでにこの名作を読み終えていて、秋山瑞人先生の新刊が出ないから仕方なく過去作の『イリヤの空、UFOの夏』のレビューを惰性で読みに来た同志に向けて書いている。

ご理解いただきたい。
この作品にまだ触れていない方は、どうか前情報は入れずに今すぐ読んでほしい。
ただそれだけでいい。
面白いだの面白くないだの、人それぞれ感性は違うだろう。

それでも頼むからこの作品だけは読んでほしい。
そしてもしも、もしも、この作品があなたの心に残る一作となったら、そのときは私と語り合おうではありませんか。

「六月二十四日は、全世界的に、UFOの日だ」と。

【評価】★★★★★★★★★★ 10/10